「アンネの日記」自体が、まるで極彩色の物語のようなのです。
日記に「キティー」と名前を付けて、語りかけるように(愚痴や日々の出来事の報告など)たくさんの言葉を綴っていること。
そこに書かれているアンネの感性の色鮮やかさ。
13歳とは思えないくらい世間や人間関係について物事を深く考えていること。
ネガティブな面だけを決して見ないで人の本質は善であることを信じていること。
書かれた時代背景の激烈さやアンネの行く末を知っていると、とても息苦しさを感じてしまう日記なんだろうな、と以前は漠然と思っていました。
そもそも「戦時下での隠れ家生活中に、13歳の少女が書いた日記」という事実だけが重要視されているのかと勝手に思い込んでいたのですが、自分が長年抱いていた先入観とは180度違う日記内容だった事にとても衝撃を受けました。
最初「アンネの日記」を知ろうとしたきっかけは、TBSドラマ「カルテット」でのすずめちゃん役がとても印象的だった満島ひかりが、「100分 de 名著」で朗読をしているという事を知り、これはぜひ観なくては…!と思ったからだったのですが。
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実際番組内での満島ひかりの朗読によって、日記の中でのアンネの感受性の豊かさや、隠れ家生活の中でも決して忘れない陽気さなどが、一層強い色と光で彩られて「アンネの日記」が極彩色の物語のように感じられたのです。
序文から、当初自分が思っていた内容とは全然違う空気を感じました。
あなたになら、これまでだれにも打ち明けられなかったことを、なにもかもお話しできそうです。
どうかわたしのために、大きな心の支えと慰めになってくださいね。
先入観ではなく、実際読んでみる事は大事ですね。
良い本を知れたな、と思っていましたら、最近Twitterで流れて来た感染症内科教授(以前TBSラジオ「Session-22」で話されていたコロナ関連の話がとても印象的、且つその考え方がとても信頼できると感じられた)がおすすめしていたのが「[グラフィック版]アンネの日記」でした。
「[グラフィック版]アンネの日記」は、ぱっと見海外の絵本を連想するようなイラストです。
そこに、アンネの文章とイラスト(構成も素晴らしい)がとても絶妙に組み立てられていて、どんどん読み進める事ができます。
実際、実店舗で中身を確認した瞬間に「買おう!」と即決したくらい心惹かれる誌面デザインでした。
こうなってみると、こんなに極彩色を感じる内容なのに、本屋さんに並んでいる「アンネの日記」のカバーデザインは、常にどこか「暗部」を感じさせるデザインなのが解せないと思っています。
それによって、どこか陰鬱な内容なのでは、と長年自分が思い込んでいた部分が多分にあるので、例年の夏の文庫フェアに合わせるなどして、カバーデザインを工夫したりして、たくさんの人が手に取るきっかけが増えれば良いと思っています。